見ていてくれる人

私が運転免許を取得してから、ようやく3年。
今、毎日通園や、通院、日常生活にも欠かせない車だけど、3年前までは徒歩と公共交通機関だけで回していた。

めいが通っている病院は交通の便が良いとは言えないところにあり、電車にバスにとなかなかの苦労をしていたし、ノンステップバスがない時間には駅から病院まで30分かけて歩いたりもした。
当時のめいは体調も今みたいに落ち着いておらず、道中何度も吐いたり発作したり。それだけに、人の目が気になる事もあったし、正直辛い目にあった事も何度かあった。泣きながら帰った事もあった。
今思えばめいも私もよくやってたなあ、と…。

ただ、めいが在宅生活に移行してから1年半続いたその生活は確かに大変だったのだけど、車中心の生活では味わえない、嬉しい出会いもたくさんあった。その中でも特に印象に残っているのが、ある時出会ったタクシーの運転手さん。

その日、受診やリハビリを終えての帰り道、ノンステップバスに乗り遅れて、歩いて帰るにはもう時間も遅かったので、タクシーを拾って帰る事にした。
相変わらずめいの体調も悪く、帰る頃にはいつも親子揃ってぐったりしていた。

たまたま拾ったタクシーには、以前一度乗せてもらった事のあるおじさんが。
向こうも覚えていてくれて、優しく声をかけてくれて、バギーをタクシーに乗せてもらい、めいと二人車内に乗り込んだ。
走り出してしばらくして、信号に引っかかった時、おじさんが小さなビニール袋を取り出してこう言った。

「頑張っているおじょうちゃんと、ママに、プレゼント!」

後部座席にいた私たちにその袋を手渡してくれた。見ると、そこには四葉のクローバーと、小さな紙切れに、ボールペンで書かれた「いいことがありますように!」の文字。
「頑張っている人に出会ったら渡そうと思って、孫と一緒に河原で探したんや。おっちゃんはこれくらいしかできひんけど、頑張るんやで。」
と声をかけてくれた。

家族や友人以外にも、こんな風に見ていてくれる人がいるんだ、と嬉しくて嬉しくて、涙が出た。
「ありがとう、頑張ります。」
とつたえた時の、ミラーに映ったおじさんの照れくさそうな優しい目は、今でも覚えている。疲れも、どこかに吹き飛んだ。

それ以来その運転手さんには出会う事はなかったけれど、その時のクローバーとメモは綺麗にラミネートして、毎日持ち歩いている。今も、私とめいのお守りで、宝物だ。

車のある生活は本当に便利だけど、たまにあの頃のような不便な生活でこそ触れる事のできる、人の温かさだったり、出会いが恋しくなったりもする。
嫌な思いもするけれど、何年も経ってから思い出すのはこういう温かい思い出の方がうんと多い。
社会の中で人に囲まれて生きていくことって、やっぱり楽しくて幸せなこと。

またいつかあえるかな、あのおじさんに。

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投稿者: megumi

うたうたいピアノ弾き。出張ライブバンドムジグルのピアノとたまにうた。 病気の治療入院中心肺停止し重い障害が残った娘の母。

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2件のコメント

  1. こんばんわ~

    ほっこり暖かくなるいいお話ありがとう*^^*

    すごく素敵な出会いでしたね*^^*

  2. >ヒナママさん
    いつかまたどこかで会えたら、改めてお礼を言いたいです^^
    ヒナママさんとも、めいがいなかったらこんな風にお話させてもらう事もなかったのかも?
    これからもよろしくお願いします(^^)

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